京の旅あれこれ【こしあん本舗】
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【心地よい春のおとずれ】  10   満開の桜花嵐山     3月30日        
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My photo                〈渡月橋下流左岸より〉 am11:00

平年より6日早く京都市内は満開に! 
気象台の観測が始まった1953年以降で3番目に早い満開宣言らしいです
30日は春らしい陽気で絶好の行楽日和になりました。

今(31日)も丁度我が家の上空で、某局の取材ヘリが凄いプロペラ音を轟かせ、ホバーリングしています。
今朝から小雨が降っていましたので、人出はかなり少ないですが。





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My photo Mi   〈渡月橋から上流を! 貸しボートも出払って久し振りに大賑わい〉
     ・・・有名な保津川下りはこの辺りが船着場。右前は亀山・右端の丸い肌は百人一首の小倉山・・・

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My photo Mi        〈左岸から、中の島の桜並木と山裾の法輪寺の多宝塔〉


法輪寺は「十三まいり」に、数え年十三歳になった子女が知恵や福徳を授かるために参詣する、
その帰り、渡月橋を渡る時に後ろを振り返えると授かった知恵が逃げると教えられています。

私もお参りしたのを覚えていますが、振り返ったらあかんと言われると、
子供ですから、どうしても後を見たくなるものですね。



* あかん は駄目の意味で京ことば。
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by koshian-honpo | 2013-03-31 15:17
【利休にたずねよ】 に秘められた京を愉しむ   〈16〉   
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                         〈箱崎天満宮一の鳥居〉
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天満宮HPより                    〈天満宮楼門〉

2009年140回 直木賞受賞作
「利休にたずねよ」    
著者 京都市在住 山本兼一

16 「ふすべ茶の湯」    秀吉  252頁
利休切腹の4年前 ―
天正15年(1587)6月18日  
筑前  箱崎松原  


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本文とは無関係




博多箱崎八幡宮の境内に、三条の茶の席が建った。社前にある小さな堂のそばだ。
建てたのは利休である。
屋根は茅葺き。
壁は、二面に青茅が編んである。
大きな松の陰にあるので、日盛りでも涼しかろう。ごろりと腕枕で昼寝でもしたくなるような夏らしい茶の席である。
秀吉は、草履を脱いで畳に上がり、ひとりで席についた。
海が近いので、夜明けの風がさわやかだ。淡く白んだばかりの境内で、いっせいに蜩が鳴きはじめた。
空には雲がない。
きわめて清浄な気韻が境内に満ちている。
ざっくりとした絽の小袖の胸元を、穏やかな風が吹きすぎていく。
―ここが極楽か。
浜につづく松林をながめ、秀吉は、ふと、そう思った。
腹の底から麗しい気持がわきあがってくるのを、しみじみ味わった。
―不思議なことだ。
利休のしつらえる茶の席にすわると、どういうわけか、そこはかとない生の歓びが、
静かにこみあげてくる。
~~~

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茶人HPより                  〈利休自筆贈り物添え状〉
                            本文とは無関係

秀吉は、すでにおととしから島津征伐の計画をねっていた。
豊後の大友宗麟をおびやかしていた島津義久に対して、すぐに鉾をおさめるよう、
強圧的な手紙をしたためたのである。
秀吉のことばを右筆が書きとめ終えたとき、そばにいた利休が口を開いた。
「申し上げてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「高飛車な手紙だけでは、島津の態度を頑なにさせるばかり。ここは硬軟織り交ぜて攻め立てなさるのがなによりの策と存じまする」
「どうする」
「わたくしに手紙を一本書かせてくださいませぬか」
うなずくと、その場で筆をとった。

豊州と貴国御鉾楯之儀に付、関白殿御内証之趣、承り及ぶ通り、数条を以って申さしめ候
とはじまるその手紙は、
分別をもって戦いをやめるよう、おだやかな調子で島津を諭すものだった。
「これに細川幽斎殿とわたくしめが連署いたしまして島津の家老に送りますれば、
島津を懐柔する隙が生じましょう」
手紙を読んだ秀吉はうなった。
秀吉とて、敵をたらし込む調略は得意なつもりであったが、利休は二枚も三枚もうわてであった。
いまにして思えば、島津征伐がことのほか順調に進んだのは、あの書状のおかげであろう。
~~~

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「このあたりにいたしましょう」
立ち止まった利休が、供の者にしたくを命じた。
枝振りのよい松のそばに緋色の毛氈をひろげ、虎の皮をしいた。
「どうぞおくつろぎくださいませ」
利休にいわれて秀吉は腰をおろした。
「これはよい」
海をながめて、波の音、松風の音を聴いてみれば、こころの雑念が消えた。
ここまでは客もおしかけて来ない。好きなだけ、ゆっくりしていればいいのだ。
「湯を沸かしますのに、しばらくお時間をいただきます」
~~~

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浜と松林は本文と無関係


松葉をふすべながら、利休は金蒔絵の重箱をひろげた。蒔絵は貝尽くし。なかは握り飯だ。
「およろしければ」
「もらおう」
手にとって口にはこぶと塩だけで握った飯が、ことのほかうまく感じられた。
~~~

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My Picture                  〈好勝手画 緑釉の香合〉


「見せてくれ」
うつむいた利休が、体をこわばらせた。掌を強く握りしめている。
「見せよ」
いまいちど命じた。利休の握り拳は開かない。
「見せよ」
さらに鋭く命じた。利休の掌がゆっくりと開いた。
奪うようにして手に取り、しげしげ眺めると、鮮やかな緑釉がかかった小さな平たい壺である。
いままで秀吉が目にしたどんな陶器、磁器より瀟洒で繊細だ。
「こんなよい品をもっていながら、なぜいままで見せなんだのか」
秀吉は、利休に裏切られた気がした。世に伝わる名物についてあれこれ教えてもらったが、
こんな美しい香合があるとは、ひとことも聞いたことがなかった。
「わしにくれ。望みのままに金をわたそう」
黄金五十枚から値を付け、ついには黄金一千枚出すとまでつり上げたが、利休は首を縦にふらない。
「お許し下さい。わたしに、茶のこころを教えてくれた恩義ある方の形見でございます」
利休がめずらしく狼狽えている。
左手に香合を入れていた袋を握っている。色はすっかり褪せているが、韓紅花の上布である。
秀吉は、利休を見すえた。利休がずっと隠していた秘密を見た気がした。
「女人じゃな。女に茶をなろうたか」
「いえ・・・」
「隠すな。見通しじゃ。ならば、その女人の物語をせよ。どんなおなごであったか。
おまえが惚れたなら、さぞや麗しい美形であろう」
ひでよしがいくら問い立てても、利休は膝の上で掌をにぎりしめ、頑なにすわったまま、じっと体をこわばらせているばかりであった。


次は「黄金の茶室」   利休 269頁
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by koshian-honpo | 2013-03-29 17:00
【心地よい春のおとずれ】  9   我が家の桜開花宣言   今年は早く3月27日        
プランター育ちの吉野桜が、今年も200ほど蕾をつけていて、昨日開花しました。
ちなみに、昨春は4月5日が開花日でした。
先程小雨のなか一枚パチリと!


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  約5年前に、小さい苗をプランターに植え今では2mほどに成長、毎年桜花爛漫?を楽しみにしています、
  後の新芽を付けている樹は、苗を植えて25年物のホントネリコで、蝶のウラキン(金)シジミの食草です。
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蝶リンクより                       〈ウラキンシジミ〉                                                    
               翅を拡げて約4cmの小さい蝶々で、裏面はこのように黄金に!、
             ちなみにフジやクズを食草にするウラギン(銀)ジジミという蝶もいます
         
                             ・・・・・☆・・・・・



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         春になると我が家の小さな歌壇を華やかにしてくれますクリスマスローズ!
                  〈数年前に親友から戴いた素晴らしい花です〉
                          
 その親友が2ヶ月前に大病を患い現在リハビリ中で力一杯頑張っています。
  心より全快復帰をお祈りし、応援しております。
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by koshian-honpo | 2013-03-28 14:09
【心地よい春のおとずれ】  8   近衛邸跡の枝垂れ桜       3月24日
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My photo Mi
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My photo





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                      近衛邸跡の枝垂れ桜と池   三題
                             京都御苑内
My photo


近衛池にふさわしく 優しくひかえめな枝垂れ桜でした。
すぐ西側には素晴らしく豪華絢爛な枝垂れ樹もあります。

                              ・・・・櫻櫻櫻・・・
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by koshian-honpo | 2013-03-25 19:58
【利休にたずねよ】に秘められた京を愉しむ      〈15〉
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                         〈松原の様子〉当時を想像して
       ・・・松林の間に、百姓などは筵などをひいたりし数多くの簡素な茶席が設けられたと・・・



2009年140回 直木賞受賞作
「利休にたずねよ」    
著者 京都市在住 山本兼一

15 「北野大茶会」    利休  236頁
利休切腹の4年前 ―
天正15年(1587)10月1日  朝
京都     北野天満宮社頭松原

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                           〈梅花雲上の本殿〉

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                         〈この松林下で大茶会〉

― これはまたこれで・・・。
ひとつの茶の湯のすがたであろう、と、利休は感心した。
京の北野天満宮の松の林に、びっしりと隙間なく、おびただしい数の茶の席が立ちならんでいる。
冬のはじめの夜明けのことで、吐く息が白い。
見上げれば、松の枝のむこうの薄明の空には、一片の雲とてなく、いかにもすがすがしい。
まもなく、この松原に大勢の人間が押し寄せてくる。にぎやかな大茶会がはじまる。
なだ、木立のあちこちに淡い藍色の闇がのこっているなかを、金襴の羽織を着けた秀吉が歩いていく。
鼠色の道服を着た利休や、津田宗及、今井宗久らの茶頭衆が秀吉のあとについて歩いた。
お付きの小姓たちは、みな新しい肩衣を着ている。
~~~

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                          〈大茶の湯之址 石碑〉
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                             〈太閤井戸址〉
                    ・・・この井戸から清水を汲み茶会に使われた・・・


今日の大茶会のことは、七月の終りに、京、奈良、堺の辻に高札を立てて触れさせた。
触書きに、こう書かせた。

茶の湯執心に於いては、又、若党、町人、百姓以下によらず、釜一、つるべ一、呑物一、
茶なきものは、こがしにても苦しからず候あいだ、さげ来たり仕るべく候事。

茶の湯に熱心な者ならば、だれが来てもよい。茶がなければ、茶を焦がしたものに、
湯をかけて飲ませてもよい―、というのである。
さらに、松原のことだから、座敷は、継ぎを当てたぼろの畳でも、莚でもかまわない。
日本人ばかりでなく、数寄心のある者ならば、唐国からもやって来い。来ない者は、
今後、茶を点てることまかりならぬ

―と、続けて触れさせた.

~~~

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                               〈大松〉


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                 〈京都新聞 H24年12月25日の映画撮影記事より〉
                    ・・・ロケ場所は北野天満宮ではないが・・・
                   この12月東映封切りの予定「利休にたずねよ」



秀吉は、ゆっくりと餅を食べた。しばらく沈黙してから、またつづけた。
「おまえの茶は、艶めいて華やかで、なにか・・・、そう、狂おしい恋でも秘めておるような。 どうじゃ。わしの目は誤魔化せまい。おまえは、その歳になってもなお、
どこぞのおなごに恋焦がれ、狂い死にでもしそうなほどに想いをつのらせておるのであろう。
そうでなければ、命を縮めるほどの茶の湯はできまい」
いわれて利休は押し黙った。秀吉の目が、じっと利休を見すえている。
利休は炎に目をむけた。
火は同じだ、と思った。遠い昔のあの日と、同じ炎が燃えている。
利休は首をふった。
「さように感じておられますなら、わが茶の湯は、まだまだ未熟。
さらなる侘び三昧の境地をもとめ、精進をかさねねばなりますまい」
「ふん」
秀吉が鼻を鳴らした。
「食えぬ男よ」
手にしていた松の箸を火中に投じると、秀吉が立ち上がった。
「まあよい。おなごに惚れるのは、悪いことではない。人の恋路は邪魔せぬものか・・・」
つぶやいて、歩きだした。
取り残された利休は、身じろぎもせずに炎を見つめていた。遠いむかしに出逢ったあの女が、
いまでもおのれのうちで、息をしているのをはっきり感じた。



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                        〈暮れなずむ茶会を終えた松林〉
                           ・・・当時を想像して・・・
以上My photo


次は「ふすべ茶の湯」   秀吉 252頁
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by koshian-honpo | 2013-03-23 19:55
 番外編   能登半島輪島    【御陣乗太鼓】    石川県指定無形文化財
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あまりにも素晴らしい、この写真の伝統芸能「御陣乗太鼓」ごじんじょだいこ 
に感動し番外でアップしました。


私の家内が、この3月10~11日に、四姉妹で楽しんだ旅行の1ページです。


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「御陣乗太鼓」の由来
天正4年(1576)越後の上杉謙信は、能登の名城であった、七尾城を攻略してその余勢をかって
奥能登平定に駒を進めた。
現在の珠洲市三崎町に上陸した上杉勢は各地を平定し天正5年破竹の勢いで名舟町へ押し寄せてきた。
武器らしいものがない村人達は鉈や鎌まで持ち出して、上杉勢を迎撃する準備を進めたが、あまりにも無力であることは明白であった。
しかし郷土防衛の一念に燃え立った村人達は、村の知恵者といわれる古老の指図に従い
樹の皮で仮面を作り、海藻で頭髪とし、太鼓を打ち鳴らしながら、寝静まる上杉勢に夜襲をかけた。
上杉勢は思いもよらぬ陣太鼓と奇怪きわまる怪物の夜襲に驚愕し、
戦わずして退散したと伝えられる。

輪島市観光HPより

御陣乗太鼓保存会は、太鼓を通して能登や輪島の魅力をこれまで以上に広めていこうと活動されています。
その迫力ある絵をアップさせていただきました。


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以上 My photo mi-ko
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by koshian-honpo | 2013-03-19 21:22
【心地よい春のおとずれ】 7   平岡八幡宮 椿を愛でる    3月17日
今年も近くの八幡さまへでかけ、
午前中少し暑いくらいの日差しの中、歴史の厚味を感じる天井絵を拝観し
また、境内の美しく珍しい何種類もの「椿」を楽しみました。



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花の天井由来
江戸時代末期、文政10年(1827)、画工、綾戸鐘次郎藤原之信により、
神殿天井に44枚の極彩色の花絵が描かれた。また内陣鴨居には、同じく極彩色で紅白のし袋から、
紅白梅、紅白椿が描かれている。これらの天井画は、室町時代、足利義満の御所が「花の御所」と呼ばれ、また自らも大変花を愛でたことから、義満再建時に、描かれていた可能性もある。


                          ・・・・・☆・・・・・

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平岡八幡宮縁起          室町時代の神護寺伽藍絵図(神護寺所蔵)

歴史
当社は高尾山神護寺の守護神として、弘法大師(空海)が平安初期、大同4年(809)12月10日、
自ら描いた僧形八幡神像を御神体として、宇佐八幡より勧請、創建去れた、山城国最古の八幡宮である

パンフより                  


                             

珍椿いろいろ
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以上My photo  <平岡八幡宮の椿>
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by koshian-honpo | 2013-03-18 14:37
【心地よい春のおとずれ】  6    渡月橋上流 船遊び        3月16日
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                  〈桜は少し蕾膨らむ程度で、まだまだ静かな舟遊び〉



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                    〈山肌は芽吹きで淡く薄茶紫に染まってきた〉


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                  〈松が、心地よい春の陽射しを受けて輝いている〉



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                            〈人待ち屋形船〉
              ・・・桜が咲き出すと凄い人で忙しくなります、今のうち休憩!・・・



My photo  保津川下りの船着場付近  散歩の途中!








 
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by koshian-honpo | 2013-03-17 21:33
【利休にたずねよ】に秘められた京を愉しむ      〈14〉
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                         〈大徳寺法堂 雲龍図〉
狩野探幽、35歳の筆。
ゆるいドーム状になった天井に画かれた龍は「鳴き龍」と呼ばれ、
地面の敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍もズウゥゥンと共鳴して音をたてます。          
                                臨済宗公式サイトより




2009年140回 直木賞受賞作
「利休にたずねよ」    
著者 京都市在住 山本兼一

14 「三毒の焔」  古渓宗陳  219頁
利休切腹の3年前 ―
天正16年(1588)8月19日  朝
京都 聚樂第 利休屋敷 二畳半  

古渓宗陳 
安土桃山時代の禅僧。大徳寺の江隠宗顕,笑嶺宗訢のもとで修行し,
のち大徳寺の住持となった。豊臣秀吉は宗陳を織田信長の菩提のために創建した
総見院の開山に迎え,信長の葬儀に導師を命じた。
権勢を恐れず,石田三成と衝突し,しばらく博多に流されたこともある。
茶の湯をよくたしなみ,千利休の参禅の師である。
Wikipediaより




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                            〈総見院・玄関〉
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                            〈総見院・鐘楼〉


― 人の世は、湯快だ。いや、おもしろ過ぎてたまらぬわい。
古渓宗陳は、大徳寺総見院の自室で、旅のしたくをしながら、
こみ上げてくる笑いを堪えかねていた。総見院は、織田信長の菩提を弔うために、
秀吉が建てた寺である。6年前、宗陳は、秀吉に請われてこの寺の開山となった。
以来、洛北の地で禅定三昧―、といけばよかったのだが、
ことは、そう都合よくは運ばない。

秀吉は、なにかにつけて宗陳を表舞台にひきずり出そうとした。
宗門の降盛を思えば、それはそれでありがたいことには違いないが、
はなはだやっかいなことでもあった。
表舞台に引きずり出されれば、どうしてもあちこちにしがらみと軋轢が生まれてしまう。
好むと好まざるとにかかわらず、濁世の争いに巻き込まれることになる。
宗陳は、思わずにいられない。
― まったく、人の世には、三毒の焔が燃えさかっておる。
三毒は、仏法が説く害毒で、貪欲、瞋恚、愚痴、すなわち、
むさぼり、いかり、おろかさの三つである

つらつら思えば、世の中のわざわいや有為転変、人の浮き沈みは、
ほとんどこの三つの毒で説明がつく。
人が道を誤るのは、たいていもの三毒が原因だ。
宗陳は、明日の朝、京を出ていかなければならない身となった。
秀吉のいかりをかって、九州に追放になるのである。
~~~




網代笠をかぶり、雲水姿となった宗陳は、夜明けとともに聚樂第の利休屋敷をたずねた。
昨日のうちに、利休から茶の誘いが来ていたのである。
若い門弟に案内されて、露地を歩いた。
ほのかな藍色に明るみはじめた庭は、市中にありながらも、深山幽谷の趣があった。
茶室の軒下で笠と袈裟文庫をはずし、壁の竹釘に掛けた。
躍口から入ると、二畳半の茶席は、手燭の光が明るかった。
床に、軸が掛けてある。膝でにじり寄って読んだ。

隠隠孤帆絶海来  隠隠いんいんたる孤帆こはん海をわたり来たる
虚空消殞鉄山摧  虚空消殞こくうしょういんして鉄山を摧くだく
大唐国裏無知識  大唐国裏だいとうこくり知識無し
己眼当従何処開  己眼当こげんまさに何れの処よりか開くべき
のびやかな書体で、そうしたためてある。

この軸は、以前、秀吉に見せられたことがあった。
虚堂智愚の墨蹟である。
~~~

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上記の掛け軸は 虚堂智愚の墨蹟 本文とは無関係です
国立博物館 TNNより




利休は黙ってすわっている。
宗陳は、なにか言おうと思ったが、なにをことばにしても、嘘になる気がした。
露地では、小鳥のさえずりが爽やかな朝を告げている。
そのまましばらく時間がながれた。ただ湯音だけが、高ぶることなく静かにつづいている。
立ち上がった利休が、いったん茶道口に消え、炭斗を持ってきた。
鐶をかけて釜をおろし、炭をついで、懐から香合を取りだした。
緑釉のその香合は、前にもちらっと見たことがある。
見せてほしいと頼んだが、その時は断わられた。
火箸でつまんだ香を炭のそばに置くと、利休は、香合を、宗陳の前にさしだした。
以前に拝見を望んだのを、覚えていてくれたのだ。
さしだした香合のそばに、赤い山梔子の実をひとつ置いたのは、
見たことを他言するなという意味だろう。
香合を手にとって、宗陳はながめた。
朝のやわらかな光につつまれた香合は、しっとりと深い緑に輝いている。
何百年もむかしの焼き物だろうが、肌は初々しい。
~~~


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My picture 好き勝手画             〈緑釉の香合〉

              
「おからだをお大事になさいませ」
低頭すると、利休は、香合を色の褪せた布袋にいれて懐にしまった。
「ありがとうございます」
宗陳は、深々と頭をさげて茶の席を出た。
軒の下で袈裟文庫をつけ、丸い網代笠を被った。
― 利休のこころの底には、いったいどんな毒の焔が燃えているのか。
それを思いながら、宗陳は筑紫に向かって歩き出した。

以上本文より


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                             〈禅僧の出立つ〉                     
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by koshian-honpo | 2013-03-16 22:44
【心地よい春のおとずれ】  5    大覚寺・大沢の池      3月13日       
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                          〈八重梅お見事満開〉

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My photo                     〈紅梅 かざぐるま〉


この大覚寺梅林で、ふっくらと膨らんだ可愛い蕾を見てから約1ヶ月振りに訪ねてみたら
見事に紅白の梅が綺麗に咲いていました。

つくしやタンポポも顔を出し、
池では鴨が気持ちよく泳ぎまわり春本番といったところです。




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My photo Mi           〈心地よい風にも仲良く楽しそう〉                       


                              ・・・☆・・・


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                       〈梅林内に顔を出していた つくし


                               。。。



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                       〈大日堂に続く石畳にタンポポ
                              

                                。。。



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My photo           〈時代劇映画やドラマに登場する   心経宝塔
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by koshian-honpo | 2013-03-13 20:55