京の旅あれこれ【こしあん本舗】
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【利休にたずねよ】に秘められた京を愉しむ      〈15〉
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                         〈松原の様子〉当時を想像して
       ・・・松林の間に、百姓などは筵などをひいたりし数多くの簡素な茶席が設けられたと・・・



2009年140回 直木賞受賞作
「利休にたずねよ」    
著者 京都市在住 山本兼一

15 「北野大茶会」    利休  236頁
利休切腹の4年前 ―
天正15年(1587)10月1日  朝
京都     北野天満宮社頭松原

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                           〈梅花雲上の本殿〉

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                         〈この松林下で大茶会〉

― これはまたこれで・・・。
ひとつの茶の湯のすがたであろう、と、利休は感心した。
京の北野天満宮の松の林に、びっしりと隙間なく、おびただしい数の茶の席が立ちならんでいる。
冬のはじめの夜明けのことで、吐く息が白い。
見上げれば、松の枝のむこうの薄明の空には、一片の雲とてなく、いかにもすがすがしい。
まもなく、この松原に大勢の人間が押し寄せてくる。にぎやかな大茶会がはじまる。
なだ、木立のあちこちに淡い藍色の闇がのこっているなかを、金襴の羽織を着けた秀吉が歩いていく。
鼠色の道服を着た利休や、津田宗及、今井宗久らの茶頭衆が秀吉のあとについて歩いた。
お付きの小姓たちは、みな新しい肩衣を着ている。
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                          〈大茶の湯之址 石碑〉
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                             〈太閤井戸址〉
                    ・・・この井戸から清水を汲み茶会に使われた・・・


今日の大茶会のことは、七月の終りに、京、奈良、堺の辻に高札を立てて触れさせた。
触書きに、こう書かせた。

茶の湯執心に於いては、又、若党、町人、百姓以下によらず、釜一、つるべ一、呑物一、
茶なきものは、こがしにても苦しからず候あいだ、さげ来たり仕るべく候事。

茶の湯に熱心な者ならば、だれが来てもよい。茶がなければ、茶を焦がしたものに、
湯をかけて飲ませてもよい―、というのである。
さらに、松原のことだから、座敷は、継ぎを当てたぼろの畳でも、莚でもかまわない。
日本人ばかりでなく、数寄心のある者ならば、唐国からもやって来い。来ない者は、
今後、茶を点てることまかりならぬ

―と、続けて触れさせた.

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                               〈大松〉


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                 〈京都新聞 H24年12月25日の映画撮影記事より〉
                    ・・・ロケ場所は北野天満宮ではないが・・・
                   この12月東映封切りの予定「利休にたずねよ」



秀吉は、ゆっくりと餅を食べた。しばらく沈黙してから、またつづけた。
「おまえの茶は、艶めいて華やかで、なにか・・・、そう、狂おしい恋でも秘めておるような。 どうじゃ。わしの目は誤魔化せまい。おまえは、その歳になってもなお、
どこぞのおなごに恋焦がれ、狂い死にでもしそうなほどに想いをつのらせておるのであろう。
そうでなければ、命を縮めるほどの茶の湯はできまい」
いわれて利休は押し黙った。秀吉の目が、じっと利休を見すえている。
利休は炎に目をむけた。
火は同じだ、と思った。遠い昔のあの日と、同じ炎が燃えている。
利休は首をふった。
「さように感じておられますなら、わが茶の湯は、まだまだ未熟。
さらなる侘び三昧の境地をもとめ、精進をかさねねばなりますまい」
「ふん」
秀吉が鼻を鳴らした。
「食えぬ男よ」
手にしていた松の箸を火中に投じると、秀吉が立ち上がった。
「まあよい。おなごに惚れるのは、悪いことではない。人の恋路は邪魔せぬものか・・・」
つぶやいて、歩きだした。
取り残された利休は、身じろぎもせずに炎を見つめていた。遠いむかしに出逢ったあの女が、
いまでもおのれのうちで、息をしているのをはっきり感じた。



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                        〈暮れなずむ茶会を終えた松林〉
                           ・・・当時を想像して・・・
以上My photo


次は「ふすべ茶の湯」   秀吉 252頁
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by koshian-honpo | 2013-03-23 19:55